Q26 連載「行動はメッセージ ~ 気づいてよ、僕たちの気持ち ~」 その3

Q
連載「行動はメッセージ ~ 気づいてよ、僕たちの気持ち ~」 その3
不適切な行動で良い結果を与えない ~計画的無視~
A

前回は、教室で先生に問題を出された時に席を立って挙手をし、「ハイ、ハイ、ハイ!」と大きな声を上げる子どもを例として挙げ、大人の都合や優しい気持ちから子どもを指名してしまうことで、「席を立って大きな声を出せば、先生は僕を当ててくれる」という誤学習のパターンが成立し、子どもは同じパターンを繰り返してしまうことをお話ししました。

ではこのような時、どう対応すればよいのでしょうか。答えは、「席を立って大きな声を上げる」という注目要求(当てて欲しい気持ち)行動に対して、無視をすることで良い結果(当てて欲しい気持ち)を与えない、です。でも、子どもの行動全てを無視するのではなく、子どもの不適切な行動(ここでは「席を立って大きな声を上げる」ですね)のみを無視することを肝に銘じておきます。応用行動分析では、これを『計画的無視』または『消去』と呼びます。つまり、子どもの存在を無視するのではなく、子どもの不適切な行動だけを無視するのです。

最近は、園や学校の先生方もたくさん勉強されています。子どもが不適切な行動で良い結果を得ようとした際には、計画的無視を行うことで対応すればよい、と理解している先生方も増えてきました。でも、実際に計画的無視をしても、不適切な行動を消去できないばかりか、ますます行動がひどくなって困っている、といった声も多く聞かれます。それはなぜでしょうか?

残念ながら、計画的無視はすぐに不適切な行動を消去できるテクニックではありません。子どもたちの不適切な行動は、学習により形成されたものですので、子どもたちは自分にとって良い結果を得ようと、更に望ましくない行動をレベルアップさせ、計画的無視に抗おうとします。この場合、子どもたちは「もっと大きな声を出さないと」「もっと先生に見えるように前に出ていかないと」と行動をエスカレートさせると考えてください。『消去(=計画的無視)』に抵抗しようと、子どもたちが行動の強度を強めることを『消去抵抗』と言います。大抵の先生方は、不適切な行動の強度が上がると、「このやり方ではよくないのかな?」と考えて、今までやっていた計画的無視を中断して、また子どもたちの不適切な行動の後に良い結果を与えてしまいます。そうすると、子どもたちは更にエスカレートした不適切な行動で、自己の要求を繰り返し訴えるようになってしまうわけです。子どもたちの不適切な行動の強度を強めているのは、実は大人の中途半端な対応によるものがほとんどなのです。計画的無視は、一度始めたら決して中断してはいけません。

この他にも計画的無視を成功させるためのポイントがありますので、また次回に詳しくお話しします。

(心理判定員 山本 秀二)

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