
おいしい牛乳と名付けられた牛乳パック
冷蔵庫には常にこれが並んでいる
これらのメーカーの肩を持つつもりはないが(いくつかのメーカーがこう名付けている)
このネーミング
あーだこーだとコピーをひねるよりこのストレートな表現
これがいいのだ
おいしくて当たり前の牛乳で他社との差別化をはかるため、様々な言葉が飾り付けられる
「低脂肪だ」、「牧場の味だ」、「やっぱりミルク」、「牛乳=青春!?」などと
飾る言葉が過剰だと逆効果で、飾りを排したストレートな言葉がこちらに入ってくる
飲食に「おいしい」以上の賛美はいらない
1982年の「おいしい生活」というコピーは糸井重里の代表的コピーである
「じぶん、新発見」(1980年)、「不思議、大好き」(1981年)に次いで世に出てコピーライターブームを起こした
当時、あまり新鮮な感じよりも当たり前な感じがした
これらの新しさは時代性を少しわかっていないと何故そんなに受けたのかは理解しにくい
これはバブルのはじける前、日本が享楽のさなかにあって、伝統的な楽しむことを悪とするような意識が否定されつつある時期に生まれた
我慢して潔く負けることもいとわない伝統的美学を既に人々は消費社会の中で忘れようとしていた
我慢の美学よりもおいしい生活だと
おいしいものはおいしいのだと
この「おいしい」にはたくさんのアンチが含まれており、読もうと思えば如何様にでも深読みできる
多くの「文化人」がたくさんの解釈を与えたが、糸井にとっては海外ロケでの不味い食事の後、帰路の機内食の和食がおいしかったことからきているらしい
ぼくが一番やりたいことっていうのは「おいしく暮らすことなんだ!」と思って、紙ナプキンに「おいしい生活。」って書いた。
(ほぼ日刊イトイ新聞、糸井重里のコピー10)
妙に時代をひっかくつもりはなかったのだろう
久保田雅也